2019
年
12
月
3
日、ワシントン
D.C.
― 世界銀行グループの国際金融公社(
IFC
)は、成長余地の大きいグリーン・ビルディング市場の投資機会について新たな報告書を発表しました。『
グリーン・ビルディング:新興国市場のための金融および政策の提言
』と題する本報告書は、グリーン・ビルディングは
2030
年までに、新興国市場だけで
24.7
兆ドルの投資機会を生み出し、経済成長を促進すると同時に持続可能な開発を加速させるであろうと予測しています。
2030
年には世界の都市部人口の半分が居住する地域となるアジア太平洋地域は特に投資先として有望であり、主に住宅用建物向けに
17.8
兆ドルの投資機会が存在すると推計されます。
「都会の空に点在する高層建築物の総床面積は
2060
年までに倍増する見通しである」と、
IFC
のアルツベタ・クレイン、気候事業部長(
Alzbeta Klein
、
Director of Climate Business
)は述べています。「この建設ラッシュの大半は、新興国市場、特に、これから人口増大、急速な都市化、所得増加を経験する中間所得層の国々において起きる。グリーン・ビルディングの建設は、低炭素排出の経済成長を促進し、熟練した労働力を必要とする雇用を今後数十年にわたって創出できる、次の
10
年間における最大の投資機会の一つとなる。」
報告書は、投資家、銀行、不動産開発会社、政府を含む所有者が、グリーン・ビルディング市場に参入することで得られる明確な財務面での恩恵について述べています。グリーン・ビルディングは、従来の建築物よりも最大
31
%も高い販売価格で売れる上、完売するまでが早く、さらに入居率も最大
23
%高いので、より高い賃料収入が見込めます。水や電気の消費量が少ないため、従来の建築物よりもランニングコストも最大
37
%削減でき、建築物の設計段階で早期にグリーンな機能を組み込めば、グリーン・ビルディングの工事費を
0.5-12
%削減できます。
さらに報告書は、グリーン・ビルディングは、
2030
年までに再生可能エネルギーおよび建設の両業界で
900
万人分の熟練工の雇用を新たに創出し、経済成長を強力に推進すると指摘しています。グリーン・ビルディングの現在の市場規模は、建設・改修業界の
8
%に過ぎず、将来的に極めて大きな成長余地があると言えます。
報告書は、民間セクターの視点から見た新興国市場への投資の可能性、およびこの潜在的可能性を実現する方法についての
IFC
の分析を紹介しています。これらの分析は、
IFC
による約
10
年に及ぶグリーン・ビルディングへの投資経験、およびグリーン・ビルディング市場の活性化に向け、各国政府が建築関連の法規制を整備、施行するのを支援する中で得た教訓に基づくものです。また、
IFC
が新興国市場向けに開発した独自の認証制度である
EDGE (
効率性改善のための卓越した設計/
Excellence in Design for Greater Efficiencies)
は、現在、
150
以上の新興国で採用されています。
IFC
のグリーン・ビルディング・プログラムは、オーストリア、カナダ、デンマーク、フィンランド、ハンガリー、日本、スイス、および英国政府のほか、世界銀行のエネルギー分野マネジメント・アシスタント・プログラム(
ESMAP
)、
EU
、地球環境ファシリティ(
GEF
)などと連携して実施されています。
2030
年までに、以下のようにアジア太平洋地域以外の市場でも、同様に重要な機会が顕在化すると考えらます。
-
南米でのグリーンな住居建設の需要は、グリーン・ビルディング市場に推計
4.1
兆ドルの投資機会を創出する見通しです。
-
東欧および中央アジアにおける新たなグリーン・ビルディングは、
8,810
億ドルの投資を必要としますが、老朽化した建築物の改修に要する投資額よりもはるかに少ない金額での建設が可能です。
-
中東および北アフリカ地域では、水や猛暑のストレスに強いレジリエントな住居への需要が高まる中で、都市部におけるグリーン・ビルディングへの投資機会の市場規模が
1.1
兆ドルを超える見通しです。
-
サブサハラ・アフリカ地域では、都市部の人口が
2050
年までに倍増し、
2030
年までに次世代のグリーン・ビルディングへの投資機会が
7,680
億ドルとなる見込みです。
IFC
の報告書は、投資家、銀行、政府、不動産開発業者、所有者による、または彼らのためのベスト・プラクティスについてまとめており、新興国市場全般にわたってグリーン・ビルディングの市場規模を拡張するための投資の提言を提供しています。グリーン・ビルディングへの融資および投資を促すことで、投資家に大きな投資機会を提供することができます。また、グリーン・ビルディングは低炭素経済への移行に伴う財務、規制、評判に係るリスクへの耐性を備えた、より強固な不動産投資ポートフォリオの構築にも貢献します。政府は、グリーンな建設への移行によって財政面で恩恵を受ける立場にあり、グリーン・ビルディングは政府が社会、環境面での目標を達成するのも寄与します。世界における温暖化ガス排出の
28
%は、建築物におけるエネルギー消費によるもので、グリーン・ビルディングは、政府が気候変動に関する目標を達成する上でも重要な役割を果たします。
IFC
について
世界銀行グループの一員である
IFC
は、新興市場の民間セクターに特化した世界最大の国際開発金融機関です。
IFC
が持つ資金力や専門知識、影響力を駆使し、世界各地の
2,000
以上の民間企業との協働を通じて、世界で最も必要とされる地域で市場と機会を創出する支援を行っています。民間セクターの持てる力を活用して途上国の極度の貧困の撲滅と繁栄の共有を促進するべく、
2019
年度は途上国に約
190
億ドル以上の長期資金を提供しました。詳細は、
www.ifc.org
をご覧ください。